稲妻というモチーフは、鉢のデザインとしては強すぎるように見えます。植物を引き立てる余白であるべきものが、自分から主張を始めてしまう。そう思いながら POT THUNDER を手に取ると、印象が少し変わります。
ボディ下部を走るジグザグは、表面に彫られた線ではありません。向こう側が見える、開口です。装飾として引かれた線が、そのまま空気の通り道になっている。この記事では、POT THUNDER の造形を三つの構造に分解して読み解きます。
この記事の要点
- 外側の稲妻ラインは彫刻ではなく3Dメッシュの開口で、意匠と通気を同じ線が担っている。
- 内壁の縦スリットは、根が壁面を辿って回り込むのを抑え、下方向へ導く。
- 底面のハニカムは水を抜くためだけでなく、抜けたあとに空気を入れるための構造。
稲妻は、線ではなく穴として引かれている
プラントポットの装飾は、たいてい表面で完結します。彫り込み、凹凸、テクスチャ。どれも鉢の外皮を加工するもので、内側の環境には関与しません。
POT THUNDER のジグザグは、そこが違います。ボディ下部に走る稲妻状のラインは3Dメッシュのスリットとして抜けており、鉢壁を貫通しています。光を受けたときに生まれる鋭い陰影は、開口があるからこそ成立するものです。見た目のために引いた線が、そのまま鉢内の空気を動かす。意匠と機能が別々に足し算されていない、というのがこの鉢の設計の起点です。
開口が鉢の下部に集中しているのにも理由があります。用土の中で最も湿りが残りやすいのは、水が溜まる下層です。乾きにくい場所に空気の入口を置けば、鉢内の水分は上からも下からも動きます。装飾のバランスだけで決めた位置なら、こうはなりません。

内壁の縦スリット。根が壁を辿れなくなる
外からは見えませんが、POT THUNDER の内壁には縦方向のスリットが入っています。目的はサークリング、いわゆる根回りの抑制です。
鉢の中で伸びた根は、いずれ壁にぶつかります。壁面がなめらかだと、根はそこを面として認識し、沿って横に走り始めます。円を描くように回った根はやがて絡み合い、株全体の吸水効率を落とします。
内壁に縦の溝があると、根は連続した面を辿れません。行き止まりに突き当たるたびに向きを変え、結果として重力の方向、つまり下へ素直に伸びやすくなります。アガベのように地上部が水平に広がり、根が垂直に潜る植物にとって、この差は数年単位で効いてきます。
鉢の内側は、植え付けてしまえば二度と見えない場所です。そこに手を入れているかどうかは、外観からは判断できません。鉢選びの基準を整理した記事でも触れたとおり、アガベの育ち方に直接効くのは、たいてい見えない側です。
底のハニカム。抜けたあとに、空気が入る
POT THUNDER の底面は、大口径のハニカム形状になっています。SIZE L では、メッシュの内部にブランドのショートロゴが組み込まれています。
底穴が一つだけの鉢は、そこが根や用土で塞がった時点で排水が止まります。開口が底面全体に分散していれば、水の抜け道は一箇所に依存しません。
ただ、排水は目的の半分です。水が下へ抜けるとき、その水が占めていた隙間には空気が引き込まれます。用土の中の水を入れ替える行為は、同時に空気を入れ替える行為でもある。「水はけがいい」という言葉が実際に指しているのは、この吸気までを含んだ循環です。乾燥地帯を出自とするアガベや塊根植物にとって、根が呼吸できる状態をどう保つかは、水やりの頻度と同じくらい重要な条件になります。
SIZE M と SIZE L、どちらを選ぶか
POT THUNDER には4号相当の SIZE M と、5号相当の SIZE L があります。造形と内部構造は共通で、違いは容量と、置いたときの重心です。
| 項目 | SIZE M | SIZE L |
|---|---|---|
| 号数 | 4号サイズ | 5号サイズ |
| 外寸 | 約φ120mm × 高さ 約110mm | 約φ150mm × 高さ 約135mm |
| 内寸 | 約φ115mm × 深さ 約100mm | 約φ140mm × 深さ 約120mm |
| 重量 | 約112g | 約174g |
| 向いている株 | 葉張り10〜15cm前後の中株、実生から上げてきた株 | 葉張り15cm以上、根が回り始めた株、塊根のボリューム株 |
判断の基準は寸法表よりも、いま植わっている鉢です。根が底から出ている、水やり後の乾きが以前より明らかに遅い。そのどちらかが出ていれば、一号上げる時期です。逆に、そうした兆候がないうちに大きくすると、土の量に対して根が足りず、乾くまでの時間だけが伸びます。

マットブラックと PLA-CF が決めている表情
素材は PLA-CF。カーボンファイバーを混ぜた樹脂で、艶を持たない表面になります。
マットな黒は、光を反射せずに吸い込みます。鉢の輪郭が背景に沈み、そのぶん植物の縁だけが前に出る。アガベの造形のように、それ自体が情報量を持つ植物と組み合わせるとき、鉢は色として後退できたほうがいい。稲妻という強いモチーフを使いながら鉢が騒がしくならないのは、この色の選択が効いているためです。
POT THUNDER の性格を、他のモデルと並べると次のようになります。
- POT THUNDER|ジグザグの開口が陰影を刻む。鋸歯の鋭い株、緊張感のある株に。
- その他のモデルを含めた比較は、PLANT POT の一覧から確認できます。
受け皿まで含めて、設計は完結する
底面全体から水を抜く構造は、受け皿の選び方まで含めて考えたほうが素直に働きます。抜けた水が皿に溜まったままだと、鉢底が水に浸かり続け、せっかく分散させた開口が閉じたのと同じ状態になります。
LOGO SLIT PLATE のようにリブの入った受け皿は、鉢底と皿面のあいだに隙間をつくります。腰水として意図的に水を張るのか、ただ溜まっているだけなのか。その二つを分けておけるのが、スリット入りの受け皿を併用する意味です。

よくある質問
稲妻状のスリットから、用土がこぼれませんか?
メッシュ状の開口のため、粒の細かい用土を使うと水やりのときにわずかに流出することがあります。粒度をそろえた用土を使うか、鉢底に大粒の軽石を敷いておくと落ち着きます。
SIZE M と SIZE L で迷ったときは、どちらを選べばいいですか?
小さいほうです。株の葉張りに対して鉢が一回り小さいくらいが目安になります。いま使っている鉢から一号だけ上げる、という刻み方がいちばん失敗の少ない選び方です。
屋外に置いても使えますか?
PLA-CF は割れにくく、屋内外どちらでも使える素材です。ただし直射日光が長時間当たる環境では、色や素材にかかわらず鉢内の温度は上がります。真夏は鉢そのものを日陰に置く、風通しを確保するといった置き場所の工夫のほうが効きます。
受け皿は必要ですか?
底面全体から水が抜ける構造のため、室内で使う場合は受け皿の併用をおすすめします。スリットの入った受け皿なら、鉢底が水に浸かり続ける状態を避けられます。
同じ線から、意匠と機能が生まれている
機能を優先すると素っ気なくなり、意匠を優先すると植物より鉢が前に出る。プラントポットの設計は、たいていこの二択に落ち込みます。POT THUNDER の稲妻は、そのどちらにも寄らずに引かれた線です。鋭さのために引いた線が空気を通し、空気を通すために開けた穴が陰影をつくる。
鉢は、植物の生き様を引き立てる余白です。その余白をどうつくるかという問いに対して、POT THUNDER は一本の線で答えています。SIZE M と SIZE L、いまの株に合うほうを選んでみてください。